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 今週は、とんでもない2冊の本に出会ってしまったので、紹介します。

 2冊とも、中学生に向けて書かれた本なのですが、
大人の私が読んでも、熱い、大きな感動を与えてくれました。

まず、1冊目。

『21世紀を生きる君たちへ』 小山内美江子

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 この本は、アウトラインは「シンガポールと日本の比較文化論」になっています。
 単一民族国家の日本と、多文化・多民族社会のシンガポールは、何もかもが全く違っており、
それを比較するだけでも、大きな勉強になるでしょう。


 ところが、この本は、それだけで終わらないのです。
 日本は、物質的に豊かな国だけれど、欠けているものがある。
 尊敬される国とは、どんな国か?
・・・そういう問いを、直球で投げかけてくるので、受けとめる私は心にズシンとくるのです。


 そして、忘れてはならない、戦争の歴史。

 太平洋戦争中は、シンガポールでも、日本兵と現地の人が戦ったそうです。
 現地の人と言うのは、シンガポールに住んでいた華僑(中国からの移民)の方達や、
当時シンガポールを植民支配していた、イギリス兵や、オーストラリア兵の方達ですね。


 今でこそ、シンガポールは、明るいイメージが強いです。
 清潔で、かっこいいビルがたくさん並んでいて、教育水準も高くて、
テクノロジーも発展している感じがします。

 私にもシンガポール人の友達がいて、彼女はいつも

「機会があったら、シンガポールに遊びに来てね!
私は自分の町が大好きよ!
あなたが遊びに来てくれたら、たくさん案内するわよ!」


と、太陽のような笑顔で、誇らしげに話してくれます。


 ところが、シンガポールの人達からしてみると、日本は戦時中に
シンガポールの現地の人達を苦しめた、憎々しい相手なのですよ。
 私は今まで、そういうことを全く知らなかった。
知識がないって、恐ろしい!! と、つくづく思いました。

 反日感情を持っているのは、何も中国大陸の人達だけじゃなくて、
インドネシアとかマレーシアとか、アジア中にいるんです。

 何しろ私自身、小学生の時に香港に住んでいたのに、
ペニンシュラホテルが戦時中の日本軍のheadquartersだったことを、
20代になるまで知らなかったくらいですから・・・あぁ、恐ろしい。
自分の無知に、一発ビンタを食らわせたくなります!


 戦争が終わった後で生まれた世代は、
戦争を起こした責任はないけれど、
これから平和な世界を作っていく責任はある、と、著者は繰り返しおっしゃっています。

 そうなんです。そういうことを、日本の学校では、うやむやにしたままで、
あまりハッキリと教えていないですよね。


 ちなみに、著者の小山内美江子さんは、
「3年B組金八先生」のシナリオを描いた方だそうです^^
 素晴らしい才能をお持ちの方です!!


 さて、小山内美江子さんの本を読んで感動が醒めないうちに、
もう一冊、とんでもない素晴らしい本に出会ってしまいました!!


 長年生きていて、どうして今まで、こんな傑作に出会わなかったのだろう?
 しかも、こんなすごい本が、戦前の、1937年に出版されていたなんて!!!!!!
 すごい衝撃です。


『君たちはどう生きるか』 吉野源三郎

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 物語の舞台は、1930年代の東京。
 主人公は、コペルくんというあだ名で、本名は純一くんという、
中学1年生の男の子です。

 
 小柄で、好奇心旺盛で、いたずらっ子だけど、学校ではいちばん成績優秀。
友達と家族を大切にしているコペルくん。

 彼には、インテリの水谷くん、優しくて正義感が強い北見くん、
そして、豆腐屋の息子で、気が弱いけれど頑張り屋の浦川くんという、
3人の大親友がいます。


 彼はお父さんを亡くしていますが、優しいお母さんと、
そして、死んだお父さんの代わりに、親身になってコペルくんを支えてくれるおじさんがいます。

 このおじさんが、コペルくんと交換日記をしているのですが、
歴史や哲学、科学、人はどう生きるべきか、という大切なことを
コペルくんに伝え続けるのです。


 物語は、彼が、学校でのいじめ事件や、友達との関係を通して成長していく学園物語を縦軸に、
そして、おじさんが、コペルくんに教えてくれる人生のたいせつなことを横軸に進んでいきます。


 私は、初めて 『ソフィーの世界』を読んだ時に、この本はすごい!!と思いましたが、
この『君たちはどう生きるか』という本も、
世界中の言語に訳して、日本が誇るべき本じゃないかと思いました。
 それくらいレベルの高い本です。
村上春樹さんとタメはれるくらい、ノーベル文学賞並みのカリスマ的な小説です!!!!!!


 先ほど1冊目に挙げた小山内さんの本とも共通していますが、
吉野源三郎さんがこの本で言いたい事は、
「人の価値は、職業や、住んでいる家や着ている服、持っているお金の量では決まらない」
ということ。


 例えば、クラスメートの浦川君の家は豆腐屋のため、
浦川君は朝早く起きてお店を手伝わなければならず、
そのせいで、授業中は居眠りばかりして、勉強が遅れ、
おまけに、あまり裕福ではないので、着ている服もみずぼらしくて
いじめっ子達にいじめられています。


 そんな浦川君のことを、コペルくんのおじさんは

「私達の多くは、ただの消費者であって、生産者ではない。
ところが、浦川くんは、まだ中学生なのに、立派な生産者だ。
浦川くんを貧しいからと言って同情するなんて、もっての他で、
中学生なのに働いている彼を、私達は尊敬すべきだ」

と、絶賛します。


 私達って、豊かな暮らしをしていると、錯覚してしまいますよね。
 あたかも、この豊かな世界を作っているのが、自分自身だというような。

 たまたま日本に生まれただけなのに、

「自分は日本人だから偉いんだぞ!」
みたいな感覚を持っているように感じます。


 ところが、このおじさんが言うとおり、私だって、何も生産していないのです。
 農業関係者の方が作って下さった野菜やお肉を食べ、
工場の人達が作ってくれたコンピューターや文房具を使って勉強しているだけ。
自分は誰かが作ってくれたものを享受し、消費しかしていないんですよね。



 ナポレオンのエピソードも、とても良かったです。
 コペルくんは、ナポレオンがかっこよくて、憧れてしまうのですが、
おじさんは、
「本当にナポレオンは偉大な人なのか?」・・・と、問いかけます。


 確かに、ナポレオンは、たった10年で帝国を築き上げた、かっこいい英雄です。
 しかし、ロシア遠征で大失敗をして、最後は一人で寂しく監獄で死にました。
 威風堂々とした将軍として、魅力的ではあるものの、
多くの兵士たちを戦争で死に追いやっている、という負の一面も背負っています。


 今の世の中もまた、ナポレオンのように「頂点に立った人が偉い」という価値観が
蔓延していると思います。
 その価値観に飽き飽きして、本当に大切なことに気付き始めている人も、たくさんいます。


 たとえば、私が小6の時に、日本の歴史で一番好きな人物はだれか?と聞かれて、
クラスで一番の優等生の男の子が、

「織田信長です!あれだけ個性的な侍はいないし、
彼は戦争の天才だった!かっこいい!」

と答え、クラス中が拍手していました。

 ・・・が、私はこの答えに大きな疑問を持ちました。

「・・・で、織田信長が、一体、日本のために、何したって言うの?」
 一方、私が大人になってから、「通訳案内士」という国家試験を受けることになり、

「日本史で一番好きな人物は誰ですか?」

という問いに対して、私が即答したのは、
「杉原千畝さんです。」という解答でした。

 
 織田信長と比べて、私が杉原千畝さんを尊敬できると感じたのは、
杉原さんは、少なくとも、多くの人の命を救った人だからです。


 世界の歴史で一番好きな人物は誰ですか?と聞かれたら、
私は「ナポレオン」よりも、「マザー・テレサ」と答える方、かな。


 コペルくんのおじさんは、
「ナポレオンの伝記と、エイブラハム・リンカーンの伝記を読み比べてごらん」と言っています。

 リンカーンのことは、本文中であまり詳しく触れられていませんが、
作者の言いたい事は私にも分かる気がしました。


 「有名人だから偉い、というわけじゃないんだよ。
 人のために、どれだけ貢献したか?・・・ということで、
人の価値は決まるんだ。」

・・・多分、おじさんが言いたかったことは、そういうことなんじゃないかな。

 コペルくんが、友達3人を裏切ってしまって、
一人で悶々と悩んだ末に、お詫びの手紙を書く・・・という章も、すごく好き。


 最初コペルくんは、 「きっと、手紙を書いて謝っても、許してもらえない。
だから、手紙なんて書きたくないよ」

と言うのですが、おじさんは、

「たとえ許してもらえなくても、謝罪の手紙は書きなさい。
許してもらえなかったら、その苦しみは自分で責任を持って受ければいい」

と、堂々と試練に立ち向かっていくように、コペルくんを説得します。
 いやぁ、かっこいいな~、おじさん。
 そして、わかるなぁ、コペルくんの気持ち。
 中学生の時にこのエピソードを読んでいたら、すごく痛切に感じただろうなぁ。


 最終章は、ガンダーラ美術についての紹介でした。
 仏像は、実はギリシャ人の彫刻家が掘ったものだった・・・!!という衝撃の事実が明らかになります。
 東洋と西洋の意外な接点。
 2000年以上も前に、すでに東洋と西洋の文化は融合していたのです。


 とにかく、この本、すごい。面白すぎる。
 そして、あの狂った太平洋戦争中の時代・・・1937年っていったら、盧溝橋事件が起こった年です
・・・に、こんなにも「まともな」本が出ているという、すごさ。

 「エーミールと探偵たち」という小説が、1931年にドイツで出版されている、
という事実を知った時にも、ありえないくらいにびっくりしましたが、
この「君たちはどう生きるか」が、日中戦争が終わった後の日本で、
よく出版を許されたものだと、びっくりしました。


 だって、この本には、「鬼畜米英」とか、「韓国や中国は日本の属国」みたいな、
アホなことは一言も書かれていない。

 「すべての人がお互いに良い友達であるような、そういう世の中がこなければいけないと思います。
人類は今まで進歩してきたのですから、きっと、いまにそういう世の中に行きつくだろうと思います。
そして、ぼくは、それに役立つような人間になりたいと思います。」
 これは、最後のページで、コペルくんがおじさんに向けて書いた交換日記ノートの文です。
 戦争中に、こんな素晴らしい文を、中学生の子が書いているという、すごさ。

 私はこの本を読んでいて、ずっとずっと、涙が止まらず、胸が熱いままでした。


 著者の吉野源三郎さんの、文章の温かさ。勇敢さ。
 彼は教師だったのでしょうか?
子供に対する愛の視線が感じられます。
もし先生だったとしたら、立派な先生だったんだろうな・・・。


 語り出すときりがないので、この辺にしますが、
機会があれば、皆さんもぜひ読んでみて下さい!!
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2012.11.15 Thu l 未分類 l COM(0) l top ▲