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『子供が育つ論語』瀬戸謙介著/致知出版社



 最近になって、私が「論語」を読み直したいと思ったのは、
3年前から通い始めた、空手道場での経験がきっかけだ。

 空手の道場で出会った先生方や先輩方が、素晴らしい人達
ばかりで、
「彼らの人柄は、どこから来るのだろう・・・?」
と自分なりに追求した結果、論語にたどりついたのである。

 本の感想の前に、私の空手道場での経験を話したいと思う。

 3年前、運動不足解消のため、何かスポーツを始めようと
思い、友達の薦め(スイスで空手を習っている)もあって、
近所の空手道場に入門した。その初日のこと。

 女子更衣室に入った時点で、私は度肝を抜かれた。
 それは、小学生くらいの小柄な女の子が、にっこりしながら

「体験入門の方ですか?何か分からないことがあったら、
私に聞いて下さい。」

と、お辞儀をしてくれたからである。

 私が小学生の時は、もっとフニャフニャしていて、
見知らぬ大人に話しかけるなんて、絶対に出来なかった。

 今どき、こんなに言葉遣いがよく、礼儀正しい小学生がいるのだなぁ…
と、ひたすら感心しながら、
「きっと6年生くらいだろう」と見当を付けたのだが、
後で聞いてみると、彼女はまだ4年生だという。

 彼女だけではない。
 空手道場に稽古に来ている子供たちの、礼儀と言葉遣いが、素晴らしい。
 みんな、休み時間には鬼ごっこなどをして遊んでいて、
ごく普通の小学生に見えるのだが、一たび練習が始まると、
彼らの表情が変わる。どんなに小さい子も稽古に集中し、
道場が真剣な空気に満ちていく。

 そして、そんな生徒さん達を育てている先生のお話と人柄が、
本当に素晴らしい。

 私の道場の先生は、本当に力のある方である。
 それは、空手の上級者も、中級者も、私のような初心者も、
全員を伸ばすからだ。

 自分が教師をしているから分かるのだが、教師の中には
「勉強の得意な生徒しか指導できない」
またはその逆で、「勉強の苦手な生徒を指導する能力が高い」
という、二つのタイプの先生が、比較的多いように思う。

 一方、能力のある先生は、どんなレベルの生徒も伸ばし、
一人として生徒を見捨てない。

 私の空手の先生は、まさに、そんな優れた先生である。

 一度の稽古で、10数人の生徒…それも白帯の初心者から、青・黄帯の中級レベル、
上級者の黒帯の練習生まで、レベルも年齢も様々な生徒たち一人ひとりの
練習をきめ細かくサポートし、練習メニューを組み立てる。
 無駄な時間を全く作らず、適度に休憩時間を入れ、
厳しく、優しく、言葉をかけ、生徒をフォローする。
 その先生としての手腕には、舌を巻くばかりだ。

 また、練習の後、先生がお話をされるのだが、そのお話がとても良い。
 
 私は初心者のため、よく、小学生の先輩たちに「型」を教えて
もらったり、基本稽古をつけてもらったりするのだが、
先生はそのことについて、このように話していらっしゃった。

「先輩から教えてもらったら、後輩がお礼を言うのは当然です。
 しかし、教えてあげた先輩も、後輩にお礼を言いなさい。
 それは、誰かに教えることで、より自分の理解が深まり、
自分のステップアップにつながるからです。
 自分の教えを聞いてくれた後輩に、感謝の気持ちで礼をしなさい。」


 先生のお話の中には、忘れられない立派なものがまだまだ
たくさんあるが、今日は文字数の関係で割愛する。
 とにかく、このような教えを先生から日常的に
受けているからこそ、自然と礼儀正しい生徒さんが
育っていくのだろう…と、感心させられる。

 そこで、「空手に流れている精神をもっと知りたい」
と思って、手に取った本が、本書である。

 さて、最近は哲学ブームで、論語の他にも、ニーチェや
「学問のすすめ」、新渡戸稲造の「武士道」、「聖書」、
他、読みやすく書かれた哲学や宗教の入門書が多い。

 論語の解説書は、漫画で書かれたものから、
大学受験生用のもの、仕事で役立つビジネスマン向けのものまで、
バラエティに富み、どれが良いのか本屋さんで迷ってしまった。

 しかし、この本を見つけたとたん、迷うことなく読もうと決めた。
 それは、これが小学生でもわかるように平易な言葉で
書かれていること。
 そして、何より、著者が空手の先生だったことによる。

 予想通り、読めば読むほど、著者の瀬戸先生の言葉は、
私の道場の先生の言葉と、シンクロして心にしみこむのであった。

 瀬戸先生がこの本を通して繰り返し読者(子供たち)に説いているのは、
「君子になりなさい」
というメッセージである。

 現代は不透明な時代と言われ、精神のよりどころを持って生きている人が、
大人の中にも少ないかもしれない。
 例えば、自分なりの宗教や哲学などを持っている人、あるいは、
尊敬する師匠がいる人などは、自分の進むべき道や、
行動の規範、善悪の基準などが比較的明確な気がするが、
情報があふれている今の時代、何を選びとり、何に従えばいいか、途方に暮れている人も多い。

 子供たちも、先生や大人から
「勉強して、将来良い仕事につきなさい」とは言われるものの、
「何で勉強しなきゃいけないの?」
と疑問に思う子も、多くて当然のように思う。

 だからこそ、哲学ブームで、論語やニーチェの本が
最近になって、急に売れているのかもしれない。

 そんな中、「君子になりなさい」と、先生からいつも言われて
育っていく子供たちは、幸せだと思う。

 君子とは、人柄に優れ、学問にも運動にもバランス良く励み、
仁(愛・思いやり)の心、勇気と正義感を持ち、
周囲から信頼される人を言う。
 勉強するのも空手を学ぶのも、君子になるための修行だと、
先生は繰り返しおっしゃっている。
 
 中学生の時に国語の授業で少しだけかじった論語。
 大人になって読んでみると、新しい気付き、理解があり、
教えられることが多い。

  論語は中国から来た優れた思想だが、
空手は日本で生まれた独自の武道であり、日本が世界に誇るべき財産だと思う。

 空手からも、論語からも、私には、まだまだ学びたいことがたくさんある。
 私も「君子」になれるように、空手も人生も頑張ろうと思う。
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2011.01.27 Thu l ノンフィクション l COM(0) l top ▲