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 最近、教育関係の本と、中国の文化・経済の本の他に、

世界の宗教について書いてある本を読みあさっています。

 きっかけは、この本。


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西遊記〈上・中・下〉 渡辺 仙州(翻訳)  偕成社


 小学生向けの易しい言葉で書かれており、

上・中・下巻の3冊を、一気読みしてしまいました!

 登場人物達が、次々にやってくる試練を、仲間と助け合って乗り越え、

成長していく、ドタバタアクション・コメディ。

 私の好きな香港の作家、金庸氏の武侠小説に、作風が良く似ています。



 言わずと知れた「西遊記」。

 日本でも映画化や漫画化され、私も子供の頃、絵本で読んで大好きでした。

 誰でも知っている有名なお話ですが、改めて原作を読んでみると、

実は、あまり知られていない細かい設定が多く、奥が深いことがわかります。



 私が「面白いなぁ~」と思ったのは、このお話に流れる宗教観。

 三蔵法師様に「天竺へ旅に出なさい」と命じ、孫悟空たち護衛の家来を

つけるのは、世界のすべてを統括する「観音様」という神様です。

 この観音様、普段は優しくて慈愛に満ちていますが、

いたずら好きな孫悟空に処罰したりと、たまに、わりと厳しかったり^^;

 普段は、空の上から下界の人間達を見守り、悟空達が敵との戦いに苦戦していても、

「ふ~ん、大変そうだけど頑張ってね」と、澄まし顔で見ています。



 しかし、事態がどうしようもなくなってくると、

空から降りてきて「仕方ないですね・・・」と、助けてくれます。

 この、手を差し伸べてくれるタイミングが、常に絶妙(笑)

 「人間は、いつも神様ばかり頼っていると成長できない」ということを、

よくわかっているため、余計なおせっかいは、一切しない(笑)

 「掌で転がす」という慣用句の通り、視野のスケールが大きく、

知的でクールでもある観音様の視点が、よくわかります。



 また、この観音さま、三蔵法師の護衛の家来の人選の基準が面白い!!

 観音様が選んだのは、以下の4名。

1. いたずら好きで暴れん坊の、猿の妖怪、孫悟空

2. 図体はデカいが、実は臆病者で女好きで怠け者の、猪八戒

3. 真面目で礼儀正しい、沙悟浄。唯一まともな人

  (※ちなみに、沙悟浄が「河童」という設定は、日本だけで、

   中国の原作では、彼は立派な大人の男性です。)

4. 三蔵法師様が乗っている馬、「玉龍」。人間の王子が化身。

   与えられた仕事しかせずに、後は我関せずで知らんぷり、という、

   言ってみれば社会主義国の駅員さんのような、やる気のない人。



 うーん。眉目秀麗、容姿端麗の三蔵法師様にお付きの家来が、

猿と豚と大男・・・。ビジュアル的にも、かなりデコボコのグループ(笑)

それに、孫悟空と猪八戒、玉龍は、性格も欠点だらけです(^^;

 また、沙悟浄と玉龍は普通の人間ですが、孫悟空と猪八戒は妖怪で、

人間ではありません。

 もっと性格的にバランスの整っている家来、それも、妖怪ではなく

全て、人間を選べばいいのに・・・!!という疑問が残ります。



 しかし、それがこの物語の面白い所!!

 三蔵法師様は、育ちも頭も良く、性格も優しく良い人ですが、

純粋すぎるため、よく旅の途中で詐欺師に騙されます。

 人を疑うことを知らないため、何度も、何度も危険な目にあって、

「いい加減にしてよ~!」と、読者の私さえイライラするほど(笑)


 そんな彼を守り、「ご主人様、騙されないで下さい!」と、

喝を入れるのが、妖魔の孫悟空たち、というわけです。

 これは、どんな人間でも完璧ではないこと、そして、

常に謙虚な心を持ちなさい、ということを、物語が教えているのではないでしょうか。

 「とても偉くて立派なお坊さん」と言われる三蔵法師を守ったのが、

性格も欠点だらけで、生まれ育ちも教養もない、妖魔の悟空だった…

という世界観。なんとも奥が深く、象徴的です。





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『世界の宗教が面白いほど分かる本』 加藤智見著 中経文庫 


 さて、『西遊記』を読んだ私は、物語に描かれる宗教に興味を持ちました。

 ・・・ん? 観音様が出てくるんだから、仏教の小説なんじゃないの?

と、思った皆様。 実は、もっと複雑なんです・・・。

 というのは、西遊記には、観音様以外に、たくさんの神様(仙人)が出てきて、

彼らは皆、道教の神様らしいのです・・・!!



 儒教と仏教は、世界史の授業で基本的なことは習ったものの、

道教については、恥ずかしながら、ほとんど何も知らない私・・・。

 上記の加藤先生の『世界の宗教が面白いほど分かる本』を読んで、

①道教は、中国生まれの宗教だが、現在は中国本土よりも、

 台湾や香港で人気。多神教。

②横浜中華街にある関羽廟なども、道教の寺院。

③日本で有名な「恵比寿様」なども、道教の神様の一人。

といったことを知りました。

 ハマっ子の私、横浜中華街に何度も足を運んで、

関羽廟を何度も見ているのに、何の宗教なんだろうなんて

考えたこともなかった!!(汗)

 今年の5月、香港の文武廟を訪れましたが、それも道教の建築だったんですね^^


 この本では、道教はもちろん、世界中の宗教や、戦後日本で起こった

新興宗教の基礎知識が書かれていて、興味深かったです。

 「戦後の日本の暮らしは、表面的には西洋化したが、

西洋のキリスト教の価値観は、日本人にほとんど理解されていない」


という指摘は、誰もが気付いているのに、今まであまり言われてこなかったことであり、 

説得力がありました。


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『世界がわかる宗教社会学入門』  橋爪 大三郎 (著) ちくま文庫


 こちらの本も、鋭い視点満載で、ウーン!と唸ってしまいました。

 「日本人は、宗教について何も知らないのに、

宗教をバカにし、見下している」
という指摘。・・・鋭いです。

 2001年9月11日の同時多発テロ事件の犯人がアルカイダだったため、

「イスラム教徒は危険」というレッテルを貼る人がいますが、

(※これは日本人に限らず、世界中に言えることかもしれません)

そう言う人達は、アルカイダはイスラム教徒の中の、ほんの一部の

過激派少数集団にすぎず、イスラム教徒内でも評判がよくないことを、

ほとんど知らないのだと思います。

 また、オウム真理教だけを見て、「全ての宗教集団は、悪!!」だと

決めつけてしまうのも、良くないことだと思います。

 私の周りでは、

「慈善事業などを積極的にしているキリスト教徒に比べて、

日本の仏教のお坊さんは、葬式業しかやっていない」


という指摘をよく聞きますが、私は今回、橋爪先生のこの本を読んで、

お坊さんがお葬式を職業にしている国は、日本だけであること、

そして、それは江戸時代に徳川幕府が制度化した名残であることを、

初めて知りました。こういう歴史的背景を知らないと、

日本の仏教の素晴らしい思想が見えにくくなってしまって、危険です。



 加藤先生、橋爪先生、二人の著書を読み、非常に興味深かったのは、

お二人の先生が「なぜキリスト教は日本に根付かないのか」

という理由を分析していた点です。

 日本人のクリスチャンの比率は、全人口の0.1パーセント。

 これは、先進国の中では驚異的に低い数字だと言われています。

(アラブ首長国連邦のような、国教がイスラム教の国でさえ、

キリスト教徒人口は2%以上いるそうです。)

 二人の先生が述べている理由は、

1.やはり日本には、日本神道など、自然の中に神様がいるという

 深い思想と文化が根付いており、一神教のキリスト教はピンと来ない

2.キリスト教は、他の宗教を一切認めない。

 仏教など、他の宗教を受容し共生しようとする日本神道とは、対照的。

 そんなキリスト教の態度が、日本人の目には傲慢に映るため、人気がない。


というもの。

 確かにその通りで一理あるのですが、私は納得が出来ませんでした。

 というのは、二人の先生は、戦後の日本のキリスト教についてしか、

述べていないからです。

 日本にキリスト教が来たのは、ザビエルがやってきた、16世紀中ごろ。

 鹿児島から北九州へと、キリスト教(カトリック)は伝道され、

キリシタン大名なども現れ、一時期の信者は100万人だったと言われています。

 マリア様を崇拝するあまり、お役人に脅されても、踏み絵さえ出来なかった人達は、

処刑されました。

 遠藤周作氏の『沈黙』にも、そんな、深い敬虔な信仰心を持つ、

日本人クリスチャン達が描かれています。

 「仏教や日本神道があるから、キリスト教は日本に根付かない」

という理由だけでは、不十分なのです。

 だって、安土桃山時代から江戸時代初期にかけて、たくさんのクリスチャンが

いたのですから。

 もちろん、大名の場合は「ポルトガルとの貿易で儲けたいから」、

織田信長の場合は「比叡山延暦寺のお坊さんに対抗する必要があった」

などの、政治的な理由もあったでしょう。

 でも、本当に神様を愛していて、マリア様の像を踏むことができずに

処刑された、敬虔なクリスチャンの人達もたくさんいたのです。

 「島原の乱」の結果、多くのクリスチャンが処刑され、

恐怖感を植えつけられてしまったから、キリスト教は日本では根付かない、

という分析をする人もいますが、それも、九州ではそうかもしれないけど、

他の離れた地方では当てはまらないのでは…?と、私は思います。



 ちなみに、お隣の国、韓国では、クリスチャン人口は40%と言われています。
 
 なぜ韓国ではクリスチャンが多いのか?

これも、誰もが不思議に思っているのに、あまり明確な理由が分からない

謎の一つです。

 私は大学生時代に、なぜかドイツ文学の教授にこの質問をしたことがあり、

その先生からは、こんな答えが返ってきました。

「一つは、韓国に古くからある“父親が一番偉い”という家族制度が、

そのままカトリックの男性(父系)優位制度と結びつき、すぐに根付いた。

もうひとつは、韓国は儒教の国で、ご先祖様を祀るための行事が多く、

親戚を招いてごちそうを作るなど、非常に大変。そういう煩雑な行事から

逃れるために、キリスト教に改宗する人が多い。」




 確かに、それも一理あると思います。

 しかし、何人かの韓国人クリスチャンの友達と付き合ってきて、

複数の韓国人の牧師先生のお話も聞いたこともある私は、

違う理由を感じてきました。





 韓国にクリスチャンが多い理由。

 そのひとつに、北朝鮮との確執があると思います。

 全ての男性に、2年と言う過酷な兵役があるのも、そのためです。

 一つだった国が二つの国に分かれてしまい、家族や友人と生き別れ…という、

つらい運命を背負ってしまったからこそ、

他人の痛みが分かる優しい人が、韓国には多い気がします。

 私の友達に、「北朝鮮と韓国の国境がなくなりますように」と毎日祈っている

韓国人の男の子がいます。

「どうか、Ritaも僕達のために祈ってね。」と、彼からお願いされました。

 また、戦争中の、日本から受けた侵略や、差別なども、理由かもしれません。

 「親や兄弟を殺されても、憎しみだけで人は生きていけない。許したい」

と祈る心が、イエス様の「敵を愛し、あなたを迫害するもののために祈りなさい」

という言葉に、マッチしたのではないかと思います。

 これは、私自身の考えなのですが、実際の所はどうでしょうか・・・?




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『もう一度学びたい 世界の宗教』 渡辺和子監修


 最後に、こちらの本を紹介して終わります。

 私は、プロテスタント系のミッションスクールに通っていたのですが、

修学旅行で京都へ行った時、「私はクリスチャンだから、お寺には入りません」

と言って、お寺の外で待っていた先生が一人だけいたため、呆れかえりました。

「じゃあ、あなた、京都に何しに来たのよ!?」と。

(母校の名誉のために言うと、お寺に入らなかった先生は、たった一人で、

その他の先生は、クリスチャンですがお寺に入り、お坊さんと談笑していました。)




 一方、大学生の時、ボランティアでインド人のファミリーに

鎌倉の町をガイドしたことがあります。

 知的で優しいお父さんとお母さん。それに、17歳のハンサムなお兄ちゃんと、

7歳の可愛い弟さん…という、英語が超堪能な、インテリの家族でした。

 「チキン以外のお肉が食べられません」という彼らのために、

蕎麦屋さんに案内した所、本当に喜んでくれました。

 お父さんは、仏教建築に対する知識が深く、

二人の男の子達も、好奇心旺盛で、たくさん質問してきます。



 多分あのファミリーは、イスラム教徒かヒンドゥー教徒だったのでしょう。

 しかし、「私は異教徒だから、お寺には入らない」とは言いませんでした。

(そんなこと言ったら、鎌倉訪問の意味がありません。)

 自分達と違う宗教に興味と敬意を表してくれた、あのインド人のファミリーを、

私は一生忘れません。




 長い前置きになりましたが、キリスト教徒の中に、

他の宗教を悪く言う人が、結構いるんです。(もちろん、全員ではありません。)

 特に、仏教をボロクソに悪く言う人がいて、私はそういう言葉を聞くと

本当に心が痛みます。

 他人を批判したら、いつか自分が批判されるでしょう。



 この「もう一度学びたい 世界の宗教」を監修したのは、

渡辺和子さんという、カトリックのシスターです。

 何冊か本を出していらっしゃる、私も大ファンの方です。

 こんな風に、「私は自分の宗教を持っているけれど、

他の宗教を理解する努力をしたい」という信念を持っている人、

私はとても立派だと思います。

 宗教のことで、よくわからないことがあると、しょっちゅう

お世話になっているこの事典。皆さんにもオススメです^^



 以上、徒然なるままに書いてきましたが、

「私が最近考えたこと~宗教について~」でした~~!!

 皆さんのご意見、ご感想、お待ちしてます。

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2010.10.28 Thu l ノンフィクション l COM(0) l top ▲